胃内視鏡検査(胃カメラ)

内視鏡検査は病巣(びょうそう)部を直接観察できることが大きな特徴です。主病巣の位置や大きさだけでなく、病巣の拡がりや表面の形状(隆起(りゅうき)や陥 凹(かんおう))、色調などから、病巣の数やある程度の深達度(しんたつど)が判断できます。

色素内視鏡検査といい、発見困難な凹凸のない病巣は色素と呼ばれる染色液を使って探す方法もあります。
また、当院で導入している特殊光内視鏡(NBI)では病巣の発見や診断がより容易になります。
もう1つの内視鏡検査の大きなメリットは、直接細胞を採り(生検:せいけん)、病理検査ができるため、病気の判定に役立っています。
胃内視鏡検査は早期胃がんの発見に大きく貢献しています。内視鏡での胃集団検診により発見されるがんの中で約60%は早期がんという成績も報告されていま す。
胃内視鏡検査は、のどの麻酔や鎮静剤を投与した後に、胃内視鏡を口から挿入し、胃の内部を観察します。粘膜の様子、色、形態の変化から胃がんのほか炎症や 潰瘍などを見つけることができます。



 胃内視鏡検査を受けられる前に

検査前日   
●夕食は軽めにしましょう
●午後9時以降の飲食は控えて下さい
●午後9時以降でも水、お茶などの飲水は可能です
●早めの就寝を心がけましょう
    
検査当日   
●朝は絶食としてください
●水、お茶などの飲水は可能です
●おなかのゆっくりとした服装で来院してください

検査直前   
鎮静剤を使用する場合
1.  胃の粘液をきれいにするお薬を飲みます
2. 通常の咽頭麻酔はおこないません
3. 直前にのどにスプレーの麻酔をします
4. 点滴から鎮静剤を注入します
        
鎮静剤を使用しない場合
1.  胃の粘液をきれいにするお薬をのみます
2. 咽頭麻酔のゼリーでのどの麻酔をします
3. 胃の動きを止める筋肉注射をします

検査後   
鎮静剤を使用した場合
クル マの運転は控えて下さい
飲食は1時間後からにしましょう
    
鎮静剤を使用しない場合
飲食 は1時間後からにしましょう



 経鼻内視鏡検査(鼻からの胃カメラ)

口 から挿入する従来の胃カメラでは、舌の付け根や喉の奥にカメラがあたるため、どうしても嘔吐反射が起きてしまいます。鎮静剤を使用すれば楽に検査を受ける ことは可能ですが、時間に余裕のない方や、鎮静剤に抵抗がある場合は、苦痛は避けられませんでした。鼻から挿入する内視鏡(経鼻内視鏡)は嘔吐反射が少な く、比較的楽に検査を受けていただくことが可能となりました。




口からの場合

舌の付け根や喉の奥にスコープがあたり、嘔吐反射がお こります



鼻からの場合

舌の付け根や喉の奥にスコープがあたらず、楽に飲むこ とが出来ます




検査前処置
検査前には鼻の通りをよくする血管収縮剤や、麻酔薬を鼻へ注入します。約15 分かかります。

検査中
鼻にスコープが入る際に、圧迫感や軽い痛みがあることもあります。口は自由な ので、医師と会話することも出来ます。

注意点
ほとんどの方は鼻からの内視鏡が可能ですが、数%の方は挿入出来ない場合があ ります。
1)鼻の手術をされた方
2)花粉症、アレルギー性鼻炎の強い方
3)鼻の中が狭い方

また、内視鏡挿入時に鼻出血を起こすこともありますが、適切に処置いたしま す。

 ピロリ菌除菌療法

ピロリ菌とは
ヒト の胃の粘膜 上皮に生息する菌で、胃十二指腸潰瘍、胃癌の発生に密接に関連しています。感染経路は経口感染で、家バエなどの媒介感染も指摘されています。以前は不完全 に処理された生活用水に混入したピロリ菌による感染が疑われていましたが、衛生環境がよくなった現在では、ピロリ菌感染者の唾液を介した感染が考えられて います。ピロリ菌の感染獲得時期については、胃酸の分泌や胃粘膜の免疫能の働きが不十分な幼小児期に成立すると考えられています。この幼小児期の感染経路 の大きな要因として、離乳食が開始される生後4〜8か月の時期の保護者による'離乳食を噛んで与える行為'が考えられています。なお、成人における感染は 急性胃粘膜病変を起こすことはありますが、一過性感染で終わる可能性が高いと考えられています。日本人では40才以上で70〜80%に感染が認められてい ます。

ピロリ菌感染の検査は
・迅 速ウレアーゼ試験(胃カメラでの組織採取)
・培養法(胃カメラでの組織採取)
・鏡検法(胃カメラでの組織採取)
・尿素呼気試験
・便中抗原測定
・血中抗体測定
当院ではすべての検査を受けていただくことが出来ます。

ピロリ菌除菌治療とは
除菌 治療として パリエット20mg、サワシリン1500mg、クラリス400mgを1週間内服します。約80%で除菌が成功しますが、除菌の不成功例は、ほとんどがクラ リスに対して耐性のH.pyloriの存在が原因です。除菌不成功例に対して、もう一度同じ薬で除菌を試みると、その成功率は30%ほどです。
 そこで、除菌不成功例に対しては、二次除菌としてパリエット20mg、サワシリン1500mg、フラジール(メトロニダゾール)500mgの3剤による 除菌療法を行います。このクラリスをメトロニダゾールに変更した方法で、二次除菌として約80%以上の除菌成功率があります。


除菌治療の副作用は
数% に下痢、発 熱、発疹、喉頭浮腫、出血性腸炎等の副作用が発生するといわれていますが、当院では、下痢が唯一の副作用の発生報告となっています。また、二次除菌で使う メトロニダゾールは飲酒により、腹痛、ほてり、嘔吐などが現れるといわれていますので、メトロニダゾール内服中は飲酒を避ける必要があります。

除菌治療後の問題点
除菌 後、約 10%程度の症例に逆流性食道炎や胃・十二指腸びらんがおこる場合があります。しかし、症状は軽微です。また、1ヶ月以内の発生が80%程度であり、6ヶ 月以内にはほとんど消失している場合が多いといわれています。したがって、これらは一過性であり自覚症状もほとんどなく、臨床的には問題のないものと考え られています。

除菌治療の適応疾患は
1)胃潰瘍、十二指腸潰瘍
2)胃MALTリンパ腫
3)早期胃癌に対する粘膜切除後
4)萎縮性胃炎
5)胃過形成性ポリープ
6)機能性胃腸症
7)胃食道逆流症
8)消化器以外の疾患(突発性血小板減少性紫斑病、鉄 欠乏性貧血、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など)